貧血
貧血

赤血球が酸素を運ぶ役割をしていることはご存知の方が多いかもしれません。
赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が酸素に結合して酸素を運びますが、その赤血球やヘモグロビンが不足した状態が貧血です。
健康診断や血液検査で貧血だから経過観察を受けてくださいとか医療機関に受診してくださいと言われてもどこに受診すれば良いか判らないという方もいるかもしれません。
迷われるのは実は正解で、ひとくちに貧血と言っても実はたくさんの原因があるのです。
それぞれの原因によって最終的に受診するところは変わりますが、まずは内科系のクリニックに受診することをお勧めします。
その時にはぜひ検査結果を持ってきてください。
その結果の中に原因のヒントも含まれているのです。
できれば時間経過も知りたいので以前のデータもあると助かります。
なぜそのようにお願いするかというと、貧血のパターン(赤血球の大きさ、ヘモグロビンの濃さ)を見ることで、ある程度病気が絞り込めるのです。また時間経過を見ることで急ぐ病気かどうかという判断の助けにもなります。
以下代表的な貧血について解説します。
小球性低色素性貧血の代表です。もっとも頻度の高い貧血かもしれません。
名前の通り鉄分が不足して起こります。
鉄分不足の食生活が原因と思われるかもしれませんが、実は体内の鉄分は細胞が壊れたときに回収され再利用されますので、よほどの偏食でない限り鉄は足りる場合がほとんどです。
ではどういうときに足りなくなるのでしょう? それは鉄の回収ができないケースです。
血が出てしまうと血のなかの鉄分は体外に出てしまい回収されなくなります。
つまり出血が最大の原因となります。
そのため若い女性に多い貧血となります。
男性や閉経後の女性などで、出血なんかほとんどしていないのに貧血だと言われる方もおられるかもしれません。
たくさん出血したら本人が判るはずと思われるかもしれませんが、多くの場合は少量ずつの出血の積み重ねなので、気がつけないこともあるのです。
例えば排便の時に肛門が切れて出血などという場合は一回に出る血は少量です。
しかしその積み重ねでついには貧血になることもあるのです。
出血したら血が減るから貧血になると思われるかもしれません。急性の多量の出血はそうなります。ただし、その場合は赤血球の数が減るだけで赤血球が小さくなったり、1つ1つの赤血球の中のヘモグロビンが減ったりする訳ではないので、正球性正色素性貧血という赤血球の大きさも赤血球1つあたりのヘモグロビンの量も正常の貧血となるのです。
鉄分が少ない状態で赤血球をつくるときには材料が少ないのでヘモグロビンの含まれる量が少なく大きさも小さい赤血球が作られます。出血で正球性正色素性貧血になった後、少し時間が経ってそういった小さい赤血球が混ざり始めると正球性正色素性貧血から小球性低色素性貧血へと移行していきます。
他に気がつかない要因としては消化管出血があります。なぜ気がつきにくいかというと赤くないからです。少量の出血だと便にまざったときには色が判らなくなります。
胃がんや大腸癌が貧血で見つかるということもよくありますので貧血を放置しないでください。
これは余談ですが、心不全による息切れで受診された方が、実はがんだったなどと言うこともたまにあります。貧血になると血が薄いので酸素をたくさん運べません。そうなると量で稼ごうとするので通常よりたくさん心臓が頑張らなくてはいけなくなるのです。心臓も血が必要でその血が薄いとちゃんと働けないという面も重なり、貧血の症状が心不全ということもみられるのです。
ですから表面的な症状だけにとらわれるのではなく全体を診る目が大事と私は思うのです。
前に述べましたように、消化管を通ることで代謝されてしまい血なのに赤くないと言うことはありうるのです。
大腸からの出血は大量であれば赤いですが、少量の場合は便に混ざると見つけにくくなります。胃潰瘍や胃がんからの出血が大量の場合は黒色便といって黒い便となることがあります。医学書では「コーヒー残渣様」と表現されることが多いです。レギュラーコーヒーのかすの用にボロボロして真っ黒な便が出たらずぐに病院に受診しましょう。
ただし、鉄剤の内服で治療を受けている人は別です。吸収されなかった残りの鉄が同様の状態になります。この場合は慌てて受診する必要は無く、鉄の薬を出してくれた病院に次に受診するときに報告するだけで良いです。
あと症状について一言
氷をガリガリ食べると聞いてどう思いますか。 これを書いている2026年は非常に暑くアイスやかき氷を食べたいというひとが多いと思います。
夏に食べたくなるのは普通ですが、これが貧血の症状のことがあると知られています。
鉄欠乏性貧血の方のなかには氷などをガリガリ食べたくなったと言われる方がおられます。
ネットなどに記載があるのかこれがきっかけで受診された方もおられます。一見関係がなさそうですが症状として知られています。面白いですね。
大球性貧血の代表です。
原因としてはビタミンB12、葉酸の欠乏が主です。これらはDNAの合成に関わっています。赤血球は成熟するにつれて小さくなるのですが、ビタミンB12や葉酸が足りなくなるとうまく成熟できなくなって大きいままの赤血球になってしまいます。
ビタミンB12欠乏を昔は「悪性貧血」と言っていましたが欠乏しているビタミンB12を補給すると治るので、「悪性」ではなくなっています。
原因は食生活では無く胃です。
ビタミンB12は小腸の末端(回腸末)で吸収されますが、じつはそのままではほとんど吸収されません。胃から出てくる「内因子」という物質が吸収には必要なのですが、胃を全部摘出してしまうと内因子がなくて吸収されなくなります。
他に自己免疫性萎縮性胃炎でも起こることはあるようですので胃があっても起こることはあります。
胃を切ったらすぐ貧血になるのかというと答えは「否」です。胃切除後10年くらいで起こってくることが多いです。
治療はビタミンB12の補給です。ビタミンB12は神経のビタミンとも言われ、しびれなどによく処方されます。しかし、巨赤芽球性貧血のひとの場合は腸からの吸収が悪いことが原因ですので、飲み薬では効果が薄いです。そのため注射になります。
葉酸も同様に巨赤芽球性貧血になりますがこちらは偏食や薬の影響が主になります。
こちらも葉酸を補給すると改善します。
有名なのはある関節リウマチの治療薬です。リウマチの治療の基本となる薬の一つですが葉酸の作用を抑制することで働いているので葉酸不足と同じ状態になります。
対策としてこの薬とは別の日に葉酸を飲みますので、大きな問題になることは少ないように思います。
透析をうけている方などはよくご存じと思いますが、腎臓は貧血と関係があるのです。
ある程度以上腎臓が悪くなると貧血が出てきます。
腎臓からエリスロポイエチンというホルモンがでていますが、このホルモンによって骨髄で赤血球が作られるのです。腎臓が悪くなりこのホルモンが減ってくると貧血になります。
今はエリスロポイエチンが合成できるので治療も容易になりました。
注射だったので透析を受ける前の腎性貧血のひとは定期的に注射が必要でした。
長持ちする注射製剤が作られ、痛い注射の回数が減りました。さらにエリスロポイエチンそのものではありませんが、その代わりになる飲み薬も開発されています。
これら以外にも
など原因は様々です。
血液内科の医師は少なく、ある程度の大きさの病院でも血液内科がないことが多いですし、あったとしても週1回の非常勤というケースもあります。
血液内科の先生の負担を減らすためにもまずは内科系の開業医への受診が良いと思います。
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